LinuxでWindowsアプリを動かすための強力なツール「Wine」。
しかし、Wineを導入しただけでは、すべてのアプリが正常に動作するわけではありません。
LinuxでWindowsアプリを動作させるための「Wine」。
しかし、Wineを導入しただけでは、すべてのアプリが正常に動作するわけではありません。
特に、Visual C++ランタイムやDirectX、.NET Frameworkなどのランタイムを適切にインストールすることで、より多くのアプリがスムーズに動作するようになります。
本記事では、Wineと一緒にインストールしておくべき必須ランタイムを詳しく解説します。
ゲームや業務ソフトを使用する際に役立つ情報をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
Wine導入後にインストールすべきランタイム一覧
Wineの互換性を向上させるために、以下のランタイムをインストールするのがオススメです。
Visual C++(VC)ランタイム
Visual Basic(VB)ランタイム
DirectX ランタイム
NET Framework ランタイム DXVKやVKD3D
Visual C++ ランタイム(VCランタイム)
Windowsアプリの多くがVisual C++(VC)ランタイムに依存しています。
特にゲームや業務アプリでは必須です。
インストールするべきVCランタイムのバージョン
Visual C++ 6.0(vcrun6
)
Visual C++ 2005(vcrun2005
)
Visual C++ 2008(vcrun2008
)
Visual C++ 2010(vcrun2010
)
Visual C++ 2012(vcrun2012
)
Visual C++ 2013(vcrun2013
)
Visual C++ 2015-2019(vcrun2019
)
インストール方法
Wine環境でVisual C++ランタイムをインストールするには、winetricksを利用すると簡単に導入できます。
winetricksをインストールしていない場合は、まずインストールします。
sudo apt install winetricks # Debian/Ubuntu系
sudo dnf install winetricks # Fedora系
winetricksを使って必要なバージョンのVCランタイムをインストールします。
winetricks vcrun6 vcrun2005 vcrun2008 vcrun2010 vcrun2012 vcrun2013 vcrun2019
インストール完了後、Wine環境をリロードして適用します。
wineboot -r
Visual Basic ランタイム(VBランタイム)
古いWindowsアプリでは、Visual Basic(VB)ランタイムが必要になることがあります。
インストールするべきVBランタイムのバージョン
- Visual Basic 5.0(
vb5run
) - Visual Basic 6.0(
vb6run
)
インストール方法
winetricks vb5run vb6run
DirectX ランタイム
3Dゲームやグラフィック系アプリにはDirectXが必須です。
Wine単体ではDirectXの互換性が完全ではないため、ランタイムを追加すると動作が改善されます。
インストール方法
winetricks directx9 directx11
NET Framework ランタイム
.NETで開発されたアプリを動作させるには、適切なバージョンの.NET Frameworkが必要です。
インストールするべき.NET Frameworkのバージョン
- .NET Framework 3.5(
dotnet35
) - .NET Framework 4.0(
dotnet40
) - .NET Framework 4.8(
dotnet48
)
インストール方法
winetricks dotnet48
DXVK / VKD3D(DirectX → Vulkan変換)
Wineでのゲームのパフォーマンスを向上させるために、DXVKやVKD3Dを利用すると、DirectXのAPIをVulkan APIに変換し、より効率的にGPUリソースを活用できます。
DXVK・VKD3Dとは?
- DXVK: DirectX 9/10/11のAPIをVulkanに変換するラッパー。
- VKD3D: DirectX 12のAPIをVulkanに変換するラッパー。
これらは主にLinux環境(特にWineやProton)でWindows向けゲームを動作させるために使われますが、Windows上でも利用可能です。
DXVKの特徴
- DirectX 9/10/11のAPIをVulkanに変換
- NVIDIA・AMDの最新ドライバーで最適なパフォーマンスを発揮
- 一部のゲームでFPS向上やグラフィックの安定化が期待できる
VKD3Dの特徴
- DirectX 12のAPIをVulkanに変換
- 将来的なDX12対応アプリのサポート向上
動作が軽くなる理由
Vulkanのオーバーヘッドが低い
DirectX(特にDirectX 11以前)はCPUの負荷が高く、描画命令の処理が遅くなりやすいですが、Vulkanはより効率的にCPUとGPUを連携させるAPIです。
→ DXVKやVKD3Dを利用すると、DirectXをそのまま動かすよりもCPUの負担を軽減できる可能性があります。
マルチスレッド最適化
DirectX 11以前はマルチスレッド性能があまり高くありません。一方、Vulkanはマルチスレッド処理が得意です。
→ DXVKを介するとDirectX 11のゲームでもマルチスレッド処理が最適化され、CPUのボトルネックを軽減できる場合があります。
NVIDIA・AMDドライバの最適化
Vulkan APIはNVIDIAやAMDが積極的に最適化しているため、DirectXのAPIを直接使うよりもドライバレベルで効率的に動作することがあります。
→ 例えば、DXVKを利用すると特にAMDのGPUでDirectX 11のゲームが高速化することがあるのはこのためです。
Wine/Proton環境での互換性向上
Linux環境では、DirectXのネイティブサポートがないため、DXVKやVKD3Dを使うとVulkanを通じてより効率的にDirectXのゲームを動作させることができるようになります。
→ これにより、フレームレートの向上やラグの低減が期待できます。
実際に動作が軽くなるかはケースバイケース
- DXVK/VKD3Dの最適化が進んでいるタイトルでは、DirectXのまま動かすよりも軽くなることがある。
- もともとDirectX 12のゲームはVKD3Dを使うと逆にオーバーヘッドが増えることもある。
- GPUやドライバの違いによっても変化する。
Windows上で試す場合は、DXVKを導入してDirectX 11のゲームのパフォーマンスを比較してみると効果を実感しやすいです。
結論
DXVKやVKD3Dを使うと、Vulkanの最適化によってCPU負荷が下がり、マルチスレッド処理が改善され、特定のゲームでは動作が軽くなる(FPS向上・ラグ低減)可能性があるということです。
インストール方法
winetricks dxvk vkd3d
フォント関連(CoreFonts)
Windowsアプリが正常に表示されるように、フォントを追加しておくとより快適に利用できます。
インストール方法
winetricks corefont
まとめ
Wineを快適に使うためには、必要なランタイムを適切にインストールすることが重要です。特に、以下のランタイムを追加すると、動作の安定性が向上し、より多くのアプリが動作するようになります。
必須ランタイム一覧
- Visual C++ランタイム(VCランタイム): 多くのWindowsアプリで必要
- Visual Basicランタイム(VBランタイム): 古いアプリ向け
- DirectX ランタイム: 3Dゲームやグラフィックアプリに必須
- .NET Framework ランタイム: .NETアプリを動作させるために必要
- DXVK / VKD3D(DirectX → Vulkan変換): ゲームのパフォーマンス向上
- CoreFonts: フォント表示の安定化
インストール方法まとめ
以下のコマンドを順番に実行すると、必要なランタイムをまとめてインストールできます。
sudo apt install winetricks # Debian/Ubuntu系
sudo dnf install winetricks # Fedora系
winetricks vcrun6 vcrun2005 vcrun2008 vcrun2010 vcrun2012 vcrun2013 vcrun2019
winetricks vb5run vb6run
winetricks directx9 directx11
winetricks dotnet48
winetricks dxvk vkd3d
winetricks corefonts
導入のメリット
- 必須ライブラリを追加することで、多くのWindowsアプリが正常に動作
- ゲームのフレームレート向上やラグ低減が期待できる
- 互換性を最大限に高めることで、エラーメッセージの発生を抑える
これらのランタイムを適切に導入すれば、Wineの互換性が大幅に向上します。ぜひ試してみてください!
メールマガジンの登録は
↓ ↓ ↓